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外傷性頚部症候群(頚椎捻挫・むちうち)の神経症状

外傷性頚部症候群とは

 

「外傷性」とは、外力によって受けた傷であることを言います。

 

「頚部」とは、頭と胴体をつないでいる部分、つまり首を言います。

なお、「頚椎」とは、首部分の頭部を支える骨のことを言い、ほ乳類は、一部の動物を除いて、7個の頚椎を持っています。

 

 

そして、「外傷性頚部症候群」とは、外力によって、頭部と胴体が異なる向きに動くことを強いられ、それによって様々な症状が出現する疾患であり、

頚椎の脱臼や骨折などの骨傷や頚髄損傷を伴わないものを言います。

 

いわゆる「むちうち」損傷は、「むちうち」として表現される動き(追突事故などで頚部がむちのように前後にしなる動き)以外でも起こるため、

最近では、外傷性頚部症候群とも呼ばれるようになっています。

 

 

外傷性頚部症候群の症状

 

外傷性頚部症候群の症状としては、頚部痛や上腕部から手指にかけて疼痛(ずきずき痛むこと)・痺れ等の症状が見られ、

場合によっては頭痛、吐き気、めまい、体の疲労感・倦怠感、肩こり等を伴うこともあります。

 

 

外傷性頚部症候群と後遺障害等級認定

 

外傷性頚部症候群の場合に獲得すべき後遺障害等級は、14級9号(局部に神経症状を残すもの)または12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)となります。

 

14級9号に認定されるか12級13号に認定されるかでは、慰謝料だけでも大きな違いがあります(その他、逸失利益も合わせるとさらに大きな額となります)。

 

等級

症状

自賠責基準

裁判基準

14級9号

 局部に神経症状を残すもの

32万円

110万円

12級13号

 局部に頑固な神経症状を残すもの

93万円

290万円

 

 

14級9号と12級13号の違いですが、端的に言えば、医学的に証明可能なものが12級13号であり、

医学的な証明まではできないが、医学的に説明可能なものが14級9号となります。

 

すなわち、12級13号は、医学的に証明可能な神経系統または精神の障害を言い、14級9号は、医学的に説明可能な神経系統または精神の障害を言います。

 

医学的に証明しうる精神神経学的な症状は明らかではなくても、頭痛、めまい、疲労感、吐き気などの自覚症状が

単なる故意の誇張(実際よりも大げさに表現すること)ではないと医学的に推定されれば14級9号が認定されることになるのです。

 

 

ここで、「医学的に証明可能」とは、相応の事故により身体の異常が生じ、その異常により現在の障害が発生していることが、

種々の検査所見を基に医学的に判断できることを言います。

 

その際に行われる検査としては、X線、CT、MRI等の画像検査、

腱反射検査、筋力検査、知覚検査、徒手筋力検査、筋萎縮検査、ジャクソンテスト、スパーリングテスト等があります。

 

これに対し、「医学的に説明可能」とは、受傷状況、症状・治療経過、臨床所見などから、

現在の症状が、相応の事故により身体に生じた異常によって発生していると説明可能であることを言います。

 

この場合、存在する異常所見と残存している症状との整合性が必要です。

 

外傷性頚部症候群の場合、仮に後遺障害等級認定がなされたとしても、14級9号の認定にとどまることが多いのが現状です。

 

もっとも、画像所見等の検査結果によっては、12級13号が認定されることがあります。

 

ここでは、痺れや麻痺の症状がある場合について説明していきます。

 

外傷性頚部症候群による痺れや麻痺の症状は、左右いずれかの頚部、肩・上肢(腕や手)から手指にかけての痺れなどを言います。

 

 

 

頚椎(cervical spine)は、Cで表示され、頚椎の各部位はC1~C7と呼ばれています。

 

人間の頚椎も7つの椎体で構成されており、頚椎は、頭部を支える役目を有しています。

 

外傷性頚部症候群で注目すべきは、C5/6、C6/7の神経根です。

(C5/C6の神経根とは、C5とC6の間の神経根を言い、C6/C7の神経根とは、C6とC7の間の神経根を言います)。

 

なぜなら、脊髄から枝分かれをしたC5/6、C6/7の左右2本の神経根は、左右の上肢を支配しているからです。

 

たとえば、C5/6右神経根が圧迫を受けると、右手の親指と人差し指に痺れなどが生じます。

 

また、C6/7左神経根が圧迫を受けると、左手の薬指と小指に痺れなどが生じます。

 

なお、XPやCTは骨を見るための検査ですので、神経根を確認するためにはMRI検査を受けることになります。

 

受傷後に撮影したMRIで、C5/6/7の神経根の通り道が狭まっている?

 

明確に圧迫を受けている?

 

これらが確認できたときは、自覚症状に一致した画像所見が得られたことになります。

 

 

MRI撮影は早期に受けることが重要です(事故による受傷から2か月以内に撮影することが望ましいです)。

 

事故による受傷から長期間が経過してからの撮影だと、事故との因果関係を疑われるからです。

 

 

12級13号を獲得するためには、MRIなどの画像所見の他に、各種検査でも異常が認められる必要があります。

 

たとえば、ジャクソンテスト、スパーリングテストだけでなく、深部腱反射テストなどでも異常が認められる必要があるのです。

 

 

さらに、後遺障害等級認定では、以上のような画像所見などの検査結果のほか、事故の態様や、病院への通院回数などが考慮されます。

 

事故の態様としては、軽微な事故ではないことが重要です。

 

軽微な事故だと後遺障害なしと判断されることがあるからです。

 

軽微かどうかについては、一概には言えませんが、当事務所の経験値としては、

自動車での事故の場合、自動車に30万円以上の損害が生じているかが一つの目安と

 

そして、病院への通院実績も重要となります。

 

まずは、事故直後から継続して通院している必要があります。

 

また、通院回数が少なすぎると等級認定されなくなる可能性があります。

 

 

 

外傷性頚部症候群によって痺れ・麻痺の症状がある場合のポイント

 

① MRIは、C5/6、C6/7に注目です。

 

痺れや麻痺などの自覚症状に一致するMRI所見が得られるのは、C5/6、C6/7だからです。

 

 

② 5つのポイント

 

 1 車と車の衝突では、物損の損害額(修理額)が30万円を超えていますか?

 

 2 痛みや痺れの症状は、事故直後から出現していますか?

 

 3 事故から数日以内に、そして継続的に病院へ通院していますか?

 

 4 事故後、早めに(だいたい2か月以内が目安)MRIを撮影しましたか?

 

 5 ジャクソンテスト、スパーリングテスト、深部腱反射テストなどの結果は陽性ですか?

 

 

 

後遺障害等級認定後の交渉

 

仮に後遺障害等級認定が獲得できたとしても、保険会社が提示する示談金額と、

弁護士が介入して解決する弁護士基準・裁判基準による示談金学とでは大きな差があります。

 

保険会社が会社内部で独自に定めた基準を示してくるのに対し、弁護士は、裁判で適用される地方裁判所支払基準で示談交渉を進めるからです。

 

したがって、後遺障害等級が認定される前だけでなく、後遺障害等級が認定された後であっても、弁護士に一度相談し、適正な賠償額を得る必要があります。

 

 

さち総合法律事務所でのご相談の際には、後遺障害等級の獲得までの一切を説明しています。

 

この場で説明できない、説明しきれないこともたくさんあります。

 

後遺障害を確実なモノにしたいとお考えの被害者は、できるだけ早期にご相談にいらしていただければと思います。

 

 

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