子どもの高次脳機能障害
子どもの高次脳機能障害についても、大人と同様、高次脳機能障害の後遺障害等級認定には必要な要素は3つです。
1 頭部外傷後の意識障害、もしくは健忘症あるいは軽度意識障害が存在すること
2 頭部外傷を示す傷病名が診断されていること
3 2の傷病名が、画像で確認できること
ただし、大人と違って子どもの場合、高次脳機能障害を原因の表出する変化、例えば性格変化やコミュニケーション障害などが、
成長過程によるものだと考えられ、見落とされてしまう可能性が非常に高いのです。
事故に遭った中学生の男の子が、両親に対して攻撃的な態度をとることが増えたとしても、反抗期だから仕方がないと思われるかもしれません。
幼少期に事故に遭った場合、落ち着きがない、計算が苦手などという症状を、その子どもの性格だと思われるかもしれません。
このように、子どもの変化に気づくことは非常に難しいのです。
だからこそ交通事故に遭った子供の周囲にいる大人は「もしかしたら高次脳機能障害なのでは?」と考える、その発想が必要になるのです。
子どもの高次脳機能障害の特徴
子どもの高次脳機能障害には以下のような特徴があります。
1 子供の成長や発達とともに症状が変化する
2 大人と比較すると、脳の可塑性(回復する力)があるため症状が改善する可能性がある
3 日常生活や学校生活の情報を把握することが大切である
4 小学校の入学から卒業までなど、長期の観察を必要とすることがある
5 小学校に入学するまでは、症状が目立たないことがある
6 環境によって症状が変化する
7 高次脳機能障害による日常生活の障害による子ども自身の自信喪失など、精神的なケアが必要となる
何度も言うように、子どもの後遺障害診断は大人と比較してもより難しく、その障害を理解することも困難です。
そのため、高次脳機能障害によって、学校の学習に追いつかないため、
先生に注意されることが増えたり、同級生からいじめを受けるケースもあります。
子ども自身も、そのような自分自身に自信が持てず、不登校などの引きこもりの状態になってしまうことも多々あります。
まずは、家族や子どもの周囲にいる大人が、子どもの症状に気づくことが大切です。
高次脳機能障害の症状
子どもの高次脳機能障害による症状は基本的には大人と同じですが、日常生活や学校生活の様子から判断します。
1つでも「もしかしたら・・・」と思っていただけるように、細かく事例を紹介しますので確認してください。
① 記憶障害
昔の記憶は残っているのに、新しいことが記憶しにくいことが特徴です。
☑ 忘れ物が多い
☑ 学校から保護者への連絡を忘れてしまう
☑ 漢字や計算を覚えられない
☑ 同じことを何度も尋ねる
☑ 何かを話そうとするが、言葉がなかなか出てこない
② 注意障害
注意力や集中力が続かない状態のことです。
☑ 物をなくす
☑ 落ち着かない
☑ 物事が完成していないのに次に進む
☑ 不注意な間違えをする
③ 半側空間無視
左側または右側のどちらか半側に気づかない状態のことです。左側無視の症状が多い傾向にあります。
☑ 左側の人や物にぶつかる
☑ 左手を使わない
☑ 左側にある食べ物を残す
☑ 道路や廊下で左に曲がることができない
☑ 着替えの時に、左側の袖に腕を通そうとしない
④ 遂行機能障害
物事を順序立てて行うなど、段取りをとって行動する能力のことです。
☑ テストなどで時間の配分ができない
☑ 動作の順序がわからない
☑ 指示をしないと行動できない
☑ すぐにあきらめてしまう、やめてしまう
⑤ 失語(言語障害)
受傷した年齢にもよりますが、幼少期であれば脳の可塑性(回復する力)から代償されることが多いことが特徴です。
☑ 話し方が遅くなる
☑ 文字を書けない、読めない
☑ 理解できない言葉を話す
☑ 新しい言葉を覚えにくい
☑ 滑らかに言葉が出てこない
⑥ 失行の障害
道具を使うことに関する障害のことです。
☑ はさみを上手に使うことができない
☑ 道具を使った動作がぎこちない
☑ 今まで使っていた道具の使い方が分からない
☑ 衣服のボタンをかけることができない
⑦ 失認の障害
失認には、視覚失認、聴覚失認、触覚失認などがあります。
☑ 漢字が書けない
☑ 段差に気づかない、つまずきやすい
☑ 読むことが難しい
☑ 動くものには気づくが、目の前の物を見つけることができない
☑ 音は聞こえるが、何の音かわからない
☑ 雑音のある場所では聞き取れない
⑧ 感情コントロールの低下、不良
感情のコントロールが苦手になり、友だちとケンカしたり日常生活でも問題が発生します。
☑ すぐに怒る
☑ すぐに泣く
☑ 乱暴な態度をとる
☑ 乱暴な言葉を言う
☑ ふざけすぎる
⑨ 対人技能拙劣
他人との交流ができず、友だちとの関係が疎遠になったりと日常生活でも問題が発生します。
☑ 自分の意見ばかりを主張する
☑ 相手の気持ちを読むことができない
☑ 協調性がない
☑ 人に強く言われると断ることができない
⑩ 固執性
頭を切り替えることができず日常生活でも問題が生じます。
☑ 融通が利かない
☑ 途中で予定が変更になると混乱する
☑ 予想外なことが起きるとパニックになる
⑪ 意欲・発動性の低下
子どもの意欲や発動性は、高次脳機能障害によるものか、また、正常範囲がどこからどこまでかが明確にはないため
非常に判別することが難しい症状です。交通事故に遭う前の状況と比較し、日常生活の影響から考えます。
☑ やる気ない、ぼんやりしている
☑ 表情が固い、笑顔が少ない
☑ 食欲がない、食べる量が非常に多くなった
☑ 眠れない、起きれない
☑ 身体を動かすことが苦手、億劫に感じる
⑫ 依存性・幼児化(退行)
子どもの年齢にもよりますが、両親や周囲の大人に対しある程度の依存性があることは当然です。
日常生活の妨げになるほどの年齢不相応な依存性があるかどうかを日常生活から観察することが必要です。
☑ 簡単なことでも自分でやろうとしない、やってもらいたがる
☑ 手をつないだり、身体を近づけたりとスキンシップが多い
☑ 駄々をこねたり、甘えたりする
立証のために準備する書類
高次脳機能障害の後遺障害等級認定のために提出する書類には、高次脳機能障害特有の書類が必要になります。
基本的には、大人が提出する書類と同じですが、子どもの場合は「学校生活の状況報告」という書類が必要になります。
大人が提出する書類の詳細はこちらのページを確認してください。
これは、学校の担任の先生に作成を依頼します。
事故以前と事故後の担任が、クラス変更などで変わっていた場合は、それぞれの担任に担当していた時期のことを書いてもらいます。
そのため、主治医の見解や治療やリハビリの状況、家庭内や日常生活の状況などを学校や担任の先生に伝えて協力体制を構築することが重要です。
また、日常生活状況報告書も大人の高次脳機能障害の提出書類と同様ですが、日常生活状況報告書の設問が、
子どもにとってそもそもあてはまらないものも多々あります。
例えば家事炊事の項目や、金銭管理、社会関係(病院や役所、公共機関など)などについては当てはまらないと回答するしかないため、
子どもの状況報告を行うには、やはり「日常生活状況報告書”別紙”」の作成が必要不可欠です。
症状として、学力や学習能力の低下がみられる場合は、成績表やテスト結果、学習帳などを添付して提出することも有効です。
子どもの高次脳機能障害に対応するポイント
高次脳機能障害は非常に難しい障害です。
だからこそ、家族や周囲の大人が正しく理解をしておくことから始まります。
1 子どもの高次脳機能障害は評価が難しいことを知っておく
2 表出する症状や障害の内容が、年齢や性別によっても一人ひとり違うことを知っておく
3 子どもの障害をできるだけ冷静にとらえること
3 症状が表出するのは小学校入学後に多い傾向があるため、就学後に評価を行う
4 症状は状況や環境、成長によって変化することを知っておく
5 子どももその家族も頑張りすぎないこと
6 子どもに対して交通事故のことや、自身の障害について伝える機会を検討すること
7 被害者の子どもだけでなく、兄弟姉妹のケアも忘れないこと
8 被害者の子どもはもちろん、家族での「楽しみ」を見つけること
9 子どもに関わる多くの人、家族や祖父母はもちろん、学校関係者や支援機関のスタッフなどと連携すること
特に、子どもが過ごす時間の長い、学校との連携はとても重要です。
移動や食事、排泄などに介助が必要かどうか、服薬などの医療的なケアが必要かどうかなどはもちろんですが、
子どもの様子を見守ってもらうため、担任の先生の目の届きやすい位置に着席したり、
子どもの学習態度や能力によっては特別学級での支援を検討することも有効です。
学校や学年が変わるときには、学校同士または担任同士での蜜な情報交換をお願いします。
最近では、学校にスクールカウンセリングがありますので、スクールカウンセラーへの協力を依頼することも役に立ちます。
高次脳機能障害の後遺障害認定サポート
何度も説明しているとおり、子どもの高次脳機能障害の症状に気づくことができないことが多々あります。
被害者の家族、特に親にとっては突然の交通事故により、親自身の心身の疲労やストレスがあるのは当然で、
障害を受け入れることができなかったり、相談する人がいないために気づけなかったりすることもあります。
まずは、高次脳機能障害を疑うことがスタートです。子どもが頭部外傷の診断を受けた場合は、まずはお電話ください。
子どもの様子をお伺いしたり、子どもの年齢や性別に併せて観察していくべきポイントを説明します。
また、子どもの今後の治療や将来のことを考えると不安になることもあるでしょう。
実際、家族の家計状況や、家族のライフスタイルの変化に困惑してしまうこともあります。
その時には、社会的サービスの情報など子供に役立つ社会的資源についてもご案内いたします。
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